PAの講習会に、ABC講習会があります。その場合のABCとは、「アドベンチャー ベースド カウンセリング」の略称です。
ABCの趣旨は、参加者がグループを築いていく過程で起こる気づき、学び、又は確認をしていくプロセス学習を支援していくものです。わかりやすく言うと、相手のゴールに向かう努力を支援するということになります。
これが、われわれ山口県の「とくさがみね森のチャレンジコース」スタッフが抱える命題の答えを出すキーワードのような気がしてなりません。
先日、PAJのO氏とI氏から出された命題、
我々にとってのABCを、初心に戻って見直すという意味にとらえ、スタッフというグループが本当にグループとして成り立っているのかどうかを見直す必要があるのかもしれません。
では、ここでいうグループって何なのでしょうか。
グループをこう定義して、我々スタッフがグループであり得るのだろうかと考えた時に、「スタッフそれぞれが、お互いに学び合っているのか。」ということが大切になってきます。逆説的に考えてみると、「相手が何を学びたいのかを知っていますか?」ということにもなると思います。
トレーナー研修会で集まったスタッフが、グループとして機能するためには、グループのメンバーそれぞれのゴールを知っておかなくてはいけません。その上で初めて、相手の学びを支援し合うことができるのではないでしょうか。
ということは、ゴール設定が重要になってきますよね。ゴール設定を無視して、又は割愛してグループダイナミクスは行われないということです。
S−Specific(目標がはっきりしていること、具体的な目標)
目標は1度に1つだけ。できるだけ明確に設定すること。
M−Measurable(測定可能な目標、目標を達成する方法がはっきりしていること)
どの程度達成できたのか、できなかったのか、後で評価できるような目標を設定すること。
A−Achievable(達成可能な目標)
ゴールが高すぎも低すぎもせず、挑戦していることが自覚できる程度の現実的な望みに基づいていること。
R-Relevant(適切な目標、成長を促すような目標)
前向きな目標を選ぶようにする。冒険活動に消極的な目標は意味がない。肯定的。
T−Trackable(追跡可能な目標)
達成状況がいつでもモニターできる目標を設定すること。そのためには達成状況を記録できるシステムを用意する必要がある。
フルバリューの定義(これだけで熱い議論がなされる深いものですが・・・)
我々スタッフには、それぞれの立場や違いにより、スタッフとして存在する目的が違ってきます。教員であったり事務職であったり、一般職の方や地域での活動を支援していらっしゃる方々などです。それぞれの背景を理解せずに、一人一人の感情面の安全を保証することはできません。しかし、今度は逆に個人の背景を理解しようとすると、これはこれで大変なことになります。
ということは、そこで必要になってくるのが、FVC(フルバリューコントラクト)ということになります。どんな形にせよ、このFVC(フルバリューコントラクト)なくしてグループのフルバリューは成り立たないのではないでしょうか。
フルバリューコントラクトについて(ABC講習会から) |
FVC(フルバリューコントラクト)は、グループ活動を通して学習者がお互いに学び合い、個人とグループの目標を達成していこうとする上で、その学びを活性化する非常に効果的な手法である。基本的に、FVCは各グループメンバーがこれから経験をするグループ活動に向けて何をしたいか、どんなことに気をつけて参加しようとするかなどを表現化(言葉、又は書き残す)するものであり、通常、本格的な活動に取り組む前に行っておく。 FVCを行う目的は、活動に参加する各自が(1)どのようなことや領域を探求したいか、(2)自分自身の中で変えてみたい行動・態度はあるか、(3)どのような新しいスキルを身につけたいか、などを見出すきっかけを作ることである。 FVCは、ここのグループメンバーがグループのことについて、そして自分自身の役割や行動について考えてもらう機会をもつことでもあり、グループでお互いのあり方、関わり方などの約束事を決めていくプロセスである。その中身としては、活動にあたってグループやリーダーに望まれているルールや特定の行動・姿勢などが盛り込まれる。 |
これは厳しい命題です。「何を知っているの?」「本当に知っているの?」「全員が知っているの?」をクリアして初めて、「知っている」ですよね。「知ってるつもり」というのは、本当は何も知っていないと同じことです。
自分は「知っている」のか、「知っているつもり」なのか、「知らないということを知っている」のか、または「知らないということすら知っていない」のか、まるで禅問答のようですが、自分はどこに属しているのか考えてみてください。
また、グループワークを行うのであれば、相手(グループのメンバー)が、どれに属しているのかも把握している必要があると思います。そのためには、やはりその確認をする機会が必要です。
という考え方・進め方は、すでにこの時点でグループ活動として機能していないということになりはしないでしょうか。
我々スタッフに投げかけられた命題を、ABC講習会から帰って自分なりに整理してみました。ある意味、我々のグループのあり方に対して否定的に捉えている感もありますが、初心に戻って謙虚に振り返ってみたら、自分たちの足りないところが見えてきたような気がします。
現在、AFPYの研修として山口県内でいくつもの有志のグループが活動を進めています。ホームページを立ち上げた「西部AFPY研究会」、とくさがみね森のチャレンジコースを中心に活動を始めた「Y−EMOTION」などなど。山口県は、OBSの教育手法を用いた野外教育活動の推進が10年以上という時を数え、PAの手法も取り入れた野外教育活動としてたくさんのスタッフが育っています。ABC講習会でも思いましたが、これほど層の厚いスタッフ陣は他にいないと言っても過言では無いと思います。だからこそ、今の自分たちに慢心せず、講習や研修や実践を重ねて、情報を交換し合ってスキルを高めていく必要があるのではないでしょうか。
文責 「おくちゃん」
思いつくままいろいろ書いてみましたが、以上あくまで私見であります。たたき台として提案しましたので、これについてのご意見や感想など、どしどし頂きたいと思います。
「森のチャレンジコース」等について書き込みのページ