小吹山・大滝・大谷山・西山・天井山・権現山

(こぶきやま・おおたき・おおたにやま・にしやま・てんじょうざん・ごんげんやま)
秋芳町・長門市

546.6m・607.6m・613m・566.8m・602.2m・560.4m

H22.9.16



カシミール3Dで作成
図書館で見つけた『中国地方の山100選』
広島ぐらいなら、日帰りできるかなとぱらぱらめくって見ていると
山口県の山も20ほど紹介されていました。
その中で、唯一登っていない山が一つ。多少難しいもののどうやら踏み跡ははっきりしているらしい、他に調べた所でも目印は随所にあると紹介してあったので、長い休暇の9月のうちに行ってみることにしました。
しかし、実際は・・
調べた資料とのタイムラグを考慮すべきでした。
“基本は地図とコンパス”を確認する山行きとなりました。
縦走には大分時間がかかることを覚悟し、家を朝5時に出発。高速で美祢まで行き、国道435号線から県道31号線・36号線を通って、懐かしの如意ヶ岳登山口の前を通り、大水峠トンネル前の駐車場についたのは、6時半でした。駐車場の入り口付近に天井山登山口の標識があり、ここから橋を渡って、民家の前に伸びる林道が天井山への登山路になっているようです。
帰りはそこから下りてこれるように祈りながら、準備をして6:45自転車で半田へ向かいました。
朝靄がかかるまっすぐな道を快適に進みます。この自転車とは大学以来30年のつきあいです。もうあちこちさびだらけだけど、買い物・コバルトラインサイクリングそして山の縦走にも欠かせない大事な愛車です。風を切って走るこの感覚・・すきだなぁ。
 
半田公会堂 半田公会堂から北西へ。谷あいの道を進む。
大水から半田までは約2km。しかしやや下りになっているので、15分で半田公会堂に着きました。少し考えて、もう少し先まで自転車で行ってみることにしました。半田公会堂から、北西へ。谷あいの道を正面に小吹山・大滝を眺めながら進みます。
道はコンクリートから砂利道に。またコンクリートになったり・・。坂が急になる頃右に堰堤が見え、左手に作業小屋が見えてきました。この作業小屋に自転車を置かせてもらい、スパッツをつけ7:30登山開始です。
コンクリートの林道をジグザクに登っていきます。正面に大滝の姿が見えました。
歩き始めて20分で58番鉄塔に到着。如意ヶ岳・桂木山の展望が美しい。ここから南西に行くと、林道が終わり、57番鉄塔への中電標識に従って山道へはいります。
「中電巡視路にしては荒れているな・・。」歩き始めてすぐに思いました。下調べでは、大谷山から西山への道が藪で分かりにくいということだったけれど、この時点でこの状態と言うことはこの先もっと荒れているかもしれない・・悪い予感はすぐに現実になりました。
58番鉄塔から20分で57番鉄塔に到着。しかし、一面は背丈以上のカヤに覆われており、先ほどの悪い予感が胸をかすめ、展望を楽しむ余裕もなく踏み跡を探しましたが、見つかりません。
この時点では踏み跡はあるはずだと思いこんでいたので、方向が違うと思いつつ56番鉄塔への中電巡視路を辿ってみましたが、下り始めた時点で違うと思い、57番鉄塔に戻り、もう一度踏み跡を探すも見つからず・・・
自分で道を見つけるしかないと思い直し、現在地を確認しました。「真北に向けて尾根を直登するしかない。」木々が完全に道を防いでいる尾根道を這うように進んでいくと、5分ほどで光が見えてきました。
明るい稜線にでると、先ほどの藪が嘘のように、踏み跡が残っています。そこから西へ進み、地籍杭があるところから小吹山へ向けて南西に進みます。
                                                

歩き始めて1時間半。30分の迷走時間もありましたが、一つ目の山小吹山(546.5m)に到着しました。

ここで家族に一つ目の山頂メール。単独行ゆえに無事を知らせること、そして今回はこのメールの送受信が折れかけた私の心を支えてくれました。
思えば最近はテープや標識のある山が多く、私もそれに慣れきっていたのでしょう。
今回の教訓の一つは“登山においては思いこみは危険である”ということ。踏み跡があると思いこんでいたこと、そして小吹山から大滝へ向かう起点も、上がり口の地籍杭があるところだと思い、そこからコンパスを北にふって進むも、その先には次の地籍杭が一向に見あたらない・・・。
迷ったら、位置が確認できる所まで戻るべし。
小吹山山頂への尾根に戻り、北に伸びる尾根を探し、恐る恐る下りていくと、ようやく今回道標となる地籍杭が現れました。
この2回の迷走を経て、迷ったら自分の位置を確認し、あるいは確認できる所まで戻り、コンパスをふって進むと言うことを肝に銘じました。時折道が開けているところはあるものの、基本的に道は藪に覆われており、その中に埋もれている地籍杭を見つけると、心からほっとしました。
536ピークを過ぎて5分ほどいったところ。ここも間違いやすいポイントでしょう。そのまま道なりに行ってしまうと、西への尾根に入ってしまいます。縦走路は北東へ右折します。左手の木には縦走路とかかれた小さな標識が掛かっていて、右手の木の両側に黄色いテープがついています。
536ピークから大滝までは、明るい縦走路が続いていました。ずっとこうならいいのに・・・。と思いながら、ロスした時間が気になって、知らず知らず歩みが早くなっていきます。大滝の姿が見えていよいよ大滝への急登が始まりました。

小吹山からの縦走起点を探した迷走30分を含め1時間15分、二つ目の山大滝(607.6m)に着きました。黒い招き猫が出迎えてくれました。本では展望があると書かれていましたが、山頂は木立に囲まれていました。。

大滝からの下りは壮絶でした。
縦走できずに、これを登り返すことがないように心の中で祈ります。
縦走路は北へ 南東にも地籍杭がある
壮絶な下りが終わって道がなだらかになった頃、ふと見ると南東にも道が開け地籍杭があります。下調べをした時、逆コースを辿った方はここで迷ったと書かれていました。同じ登山路でも行く方向によって見え方が違い、迷うポイントも変わってくるのですね。
そろそろ大谷山が近いと思う頃、また藪に覆われてきました。そういえば、今日はクモの巣に悩まされません。あまりに木が茂っているので、クモの巣を張るスペースもないのかな。と思っていると地籍調査三角点の杭がありました。今回、天井山への縦走路途中、大水峠の手前、権現山手前でも同じ杭を見ました。登りはまだ続いているので山頂ではないと思いながら、一応写真を撮りました。

大滝から40分ほどで本日三つ目の山、大谷山(613m)に着きました。四方を雑木林に囲まれ、ぽっかりと開けた中に三角点がありました。今回の縦走中一番高い山ですが、標識もなくGPSで位置と高度を確認しました。

山に入って4時間、ずっと目の前の藪とコンパスと地図に向かい合っているので、家族にメールを送り、メールを受けとることで下界とつながっていることを確認し、ほっとしてしまいます。
南にわずかに見える展望を眺め、降り注ぐ陽射しに今日の魚釣りは暑いだろうと思いながら、最も危惧していた大谷山−西山の縦走に向けて、再び藪の中に突入です。
確かに藪はありましたが、これまでの道もすごかったので、もう驚くことはありません。やがて鞍部について地籍杭を確認し、西山へ向けて上がりました。

11時35分、本日4つ目の山、西山(566.8m)に到着しました。そういえば、朝食は朝5時に出る時に車の中で食べたきりでした。その間飴をいくつか食べたものの、さすがに空腹を感じ半分来たという安心感もあって、もってきたおにぎりを食べてエネルギー補給です。

木立の中を下りると、開けた道に出ました。久々に展望を見ることもできました。しかし、道は伐採された木が道をふさぎ、その上・左右にも木々が生い茂り、どこを通ったらいいのやら・・・。明るい尾根道を歩くと切り倒された木の間に脚が埋まり、ならばと左手の樹木の中にはいるとイバラと木々に行く手を阻まれます。

久々の展望
疲れた足に応えるヤブ漕ぎ。北に見える天井山が遠く感じます。やっとの思いで509ピークに着いた時、重大な失敗をしたことに気がつきました。地図を落としてしまったのです。一瞬迷いましたが、時計を見ると12時過ぎ。まだ引き返せないことはない。なによりこの藪山を地図無しで踏波することはできない。西山からここに来るまで何度か写真を撮った時に落としたに違いない。もし、見つからなかったら・・。
今回の教訓その2“山では落とし物をすることは自殺行為だ”他のアイテムは全て落ちないようにカラビナやひもを付けていたのに、地図だけを手に持っていたのが敗因でした。再び難渋する藪道を引き返し、地図を見つけた時には涙が出そうでした。
今度は地図をチャックの着いたポケットに入れることを確認。509ピークからも厳しい藪道が続き、大谷山山頂手前で見た地籍調査三角点の杭が藪の中に埋もれていました。
地籍杭も藪に埋もれて分からないので、とにかく尾根を外さないようにと思うけれど、歩きやすい道を選んでいるといつの間にか支尾根に入り込んでいることがあり、慎重にコンパスを振りながら進んでいきます。大谷峠へ下りる時も、尾根は南東に続いており、そこから北東に向けて谷を下りて行くことになるので、しばらく躊躇しました。

5つ目の山、天井山(602.2m)今日の縦走の中で唯一展望のある山なのですが、背丈の伸びたカヤと疲れ切った身体で、展望を楽しむ余裕がなかったのが残念。

北に日本海が美しい 北西へ権現山か?
東に桂木山 南西にわずかに見えるのは大谷山か?
標識があるだけに天井山からの道はまるで高速道路でした。テープも随所にあり、改めて最近の自分はコンパスと地図ではなく、このテープに頼って登っていたのだと反省。天井山からの下り、思いがけずギンリョウソウにであうことができ、しぼんでいた心が少し元気になりました。
天井山から1時間ほど、痩せた尾根の先にお地蔵様が待っていてくださった。
時刻は3時5分。ここから権現山までは、40分。
もう一つ山に登るにはぎりぎりの時間だけれど、
もう一度来ることは考えたくないので、折れそうな心を励まし登り始めました。
道ははっきりとしていて、もうコンパスも必要ない。とにかく足を前に運ぶだけ・・。道がはっきりしてくると、クモの巣も出てきたが、もうはらう気力がない。山頂手前の地籍調査杭も足を止めると行けなくなりそうでとにかくひたすら登ります。

本日最後の山、権現山(560.4m)。標識がなんだか懐かしく思えます。ここまで来れた喜びよりも安堵の思いがこみ上げてきました。

権現山を3時47分に出発。下りてみると結構勾配が急だったことが分かり、景色をみる気力もなかったことに気づかされました。気持ちは急ぐのですが、天井山へ向かう頃から筋肉疲労により足がつり始めているので、ここで焦って肉離れにでもなれば山の中で夜を迎えることになるかもしれない・・。それだけは絶対に避けたいので、ゆっくりと足元を確認しながら下りていきました。
大水峠でお地蔵様にお礼と下山まで守ってくださいとお願いをして峠を下りていくと、天井山登山口を示す標識から林道へ出ました。コンクリート道はすぐ地道に変わり堰堤がありました。あとは、人里目指して下りるだけです。

 木々の切れ間から、駐車場に止めた車を見た時には心からほっとしました。
家族に無事に下山したことをメールして、周りを見ると山は夕方の日が陰り始めていました。朝靄の中出発してから9時間半。長い縦走だったのだと改めて思いました。
 押し返してくる藪へのストレス、常に地図で位置を確認する緊張感、地図を取りに戻った時の緊迫感、筋肉疲労で固くなっていく足への不安。でも、この緊張と不安こそが実は山登りの原点であったのだと、山登りを始めた時の謙虚な気持ちを思い出すことができました。
最近の自分はどこか慢心していたのかもしれません。

今回得た教訓
・“登山においては思いこみは危険である”
・“山では落とし物をすることは自殺行為だ”

は、これからも自分が登山を続けていくために忘れてはいけないことだと、今回の山々に教えてもらったのだと思います。そう思うと、疲れはあるけれど爽やかな気持ちが広がって、帰るまでの元気が出てきました。。大事な愛車を作業小屋に取りに行き、家に着くまでこの緊張感を途切れさせないように帰ろうと自分に言い聞かせ、帰路につきました。

         15分(自転車)      15分(自転車)       20分          20分         50分(迷い30分含む)
大水峠駐車場   →   半田公会堂     →  作業小屋  →   58番鉄塔  →    57番鉄塔    →     小吹山  

30分(迷い)         45分     40分       15分      5分    1時間(地図探し35分)        35分
   →   縦走路分岐  → 大滝   → 大谷山   →  鞍部  → 西山      →       509ピーク →  大谷峠

  25分       1時間10分        30分        20分       20分
   →   天井山   →     大水峠  →   権現山  →  大水峠  →  大水峠駐車場

                                                              (全行程9時間半)