大山山系

   甲ヶ山〜三鈷峰縦走 

こうがせん     さんこほう
1338m       1516m

島根県西伯郡大山町
H24.8.14〜8.17

MAP(カシミール3Dで作成)


8月14日(火)

 信州から帰って1週間経ちました。「また行くの!」と言われながら、この夏3回目のお山に向かいます。今回は大山山系「甲ヶ山ゴジラの背」と「大山稜線親指ピーク」が主な目的です。どちらも面白そうな岩場で、保険でザイルを持っていきました。

米子平野が垣間見られます。 大山のモンベル館 川向かいの駐車場

 14日は午後に山口を出発して、高速で米子道まで走ります。帰省ラッシュのピークをぎりで回避し、4時間弱で大山町に着きました。泊まりは前回と同じ駐車場。今回車を放置することになるので、トイレの横に駐車しました。明日の朝5時というリクエストにほとんどのタクシー会社に断られ、米子○一タクシーだけが当たり前のように引き受けてくれました。
 相棒が鍋焼きうどんを調理したので、熱気のこもった車の中で夜をむかえました。


8月15日(水)

 朝3時半起きで準備をしていると、4時半にはタクシーがやってきました。5時前に乗り込んで出発です。
 5月には通行止めだった川床はやはり今回も通行止めで、「治す気ないんだなぁ。」というタクシー運転手のぼやきとともに一度町に降りて回り込む大回りコースになりました。タクシー代が3倍以上かかってショックでしたが、結果的には予想以上の面白い山歩きになったので今は相棒とともに納得しています。

5:53分 船上山自然の家出発 6:10分 茶園原から船上山を望む 6:20分 船上山登山口

 船上山までの登山道はしっかり整備されていました。ただ、どこが山頂なのかよく分からないまま船上神社まで登って、大山縦走路に入りました。

7:00分 船上山登山道 7:13分 船上神社 7:20分 大山縦走路入り口

 船上山から勝田ヶ山まではガイドで2時間。縦走路にしては気持ちよすぎるブナの林の中を進んでいきました。次第に道幅が狭くなり、変なところにある三角点を発見しました。そこから道がどんどん狭くなり岩もむき出しになってきました。しばらくして勝田ヶ山の標識です。

9:10分 勝田ヶ山三角点 9:20分 厳しくなる登山道 9:30分 勝田ヶ山 1149m

 勝田ヶ山から甲ヶ山までの稜線に、今回の目的のひとつである「ゴジラの背」があります。しかし、勝田ヶ山から見える稜線は灌木に覆われて、「ゴジラの背も草が茂ったのかねぇ。」なんてあきらめかけていたとき、突然それは現れました。ゴジラの背とはよくつけたものです。岩肌が乱立して稜線に並び、山頂目指して登っています。
 その景色のも興奮しましたが、この日風がとても強く、両足で踏ん張らないとたちまち持って行かれそうなほどです。ハーネスをつけてザイルをつなぎました。慎重に登ります。10mずつ交互に進みますが、岩場の高度感と強風のおかげでむっちゃスリリングな体験ができました。大きな岩場もクリアし「イェーィ!今日の難所クリアだぜぃ!」と夫婦で喜んだのですが、実はこれが今回の始まりで、この時は予想もしていなかったのですが、さらにやばい体験をすることになりました。

10:00分 稜線は灌木に覆われています。 10:30分 いきなりゴジラの背が現れました。
強風が吹いています。  10:50分 ゴジラの背のトップ

 甲ヶ山山頂(1338m)到着は11:10分でした。飛ばされそうな勢いで風が吹いています。ゴジラの背の興奮も手伝って2人ともテンションが高く、狭い山頂をうろうろ歩き回りました。かぜにあおられてバランスを崩しようやく落ち着きを取り戻しました。落ち着いてみると、甲ヶ山からの下りはなかなかの岩場で、今まで以上の急斜面です。ザイルはここでこそ必要なのではと思わせるくらいでした。

 誰もレポートしていないことが不思議なくらいのスリリングな岩場の連続で、ようやく子矢筈までたどりつきました。子矢筈の山頂は2つの岩でした。難所を抜けた安堵感いっぱいでしたが、ここからの下りがまたものすごくて、振り返ってみた子矢筈を見て納得しました。

12:38分 子矢筈山頂 1319m 甲ヶ山をバックに 下山もまたやばい岩場 この面を下りました

 それからほどなく矢筈ヶ岳に着きましたが、ひさしぶりに土の香りのする山頂で心から安心しました。ザックを下ろして昼食をとります。

もうすぐ山頂 子矢筈をバックに 13:00分 矢筈ヶ岳山頂 1358m 13:30分 下山開始 大山は雲の中でした。

 200mの高度差を下っていきますが、高度差以上にきつく感じる下りでした。気持ちがへろっていたからでしょうか。1時間半かけて大休峠に到着しました。大休小屋には大学生のパーティがすでに到着しており、8人用テントが張られていました。小屋の反対側に自分たちのテントを張り、水を汲みに行きました。水場は一向平(いっこんなる)側に100m下ったところで、うわさ通りささやかな水場でした。数日前まで荒天で水は涸れていませんでしたが、晴天が続くと水が涸れてしまうかもしれません。
 大学生達の時間をじゃましないように夕方までの時間をのんびり楽しみます。この晩が山での最後の夜になるので、お約束のかま飯でした。相変わらずものすごい風にテントをあおられながら、19:30分就寝です。

14:55分 大休峠に到着です。 縦走概念図 小屋の横にテントを張りました。

高低差グラフ(カシミール3Dで作成


8月16日(木)

 4時起床。風は多少穏やかになっています。木々の合間から星が見えて晴天の予感です。テントをたたんで 5:40分 大休峠を出発しました。野田ヶ山へは200mのアップです。灌木の中をゆっくりと登っていきます。

7:10分 灌木の中で休憩 6:30分 野田ヶ山山頂(1344m) 親指ピークが見えます。 下りがまたきびしかった・・・

 あこがれ?の親指ピークまでは数十分でした。ピークの岩肌を左に巻くように登っていきます。遠目にはそれほど難しくなさそうな岩ピークでしたが、親指の先端付近はほとんどの岩が浮き岩で今にも崩れそうです。ザックを外して先端までよじ登りましたが、高度差に加えて足場の不安定さが恐怖感をあおります。ぜったいにここで飲むぞと持ってきたコーヒーを飲みましたが、味を感じる余裕はありませんでした。ザイルをつないでアンカーをとって、ようやく落ち着きました。ここまで来た充実感がふくらんできます。2人の夢が叶いました。
 ピークからの下りは振子山側に下ります。警告が出ているほどの危険箇所で、木々の根だけが稜線の土を抱えてようやく稜線を維持しています。ピークの不安定さといい、稜線の不安定さといい、近いうちに行ってはいけないピークになりそうです。

 
 7:25分に親指ピークに取り付きました。下りは残地ザイルが2本かかっていますが、ザイルを結んでいる木の根はすでに崖側がむき出しで不安定この上ありませんでした。ピークの岩にアンカーをとって、自分たちのザイルで下りました。
 自分たちが行っていてなんですが、これからここで事故が起こらないことを心から願います。 

 親指ピークから振り子山までは、不安定な稜線の東側を巻きます。気の許せないルートで振子山に着いたときにはすでにくたくたでした。

稜線の西側はこんなです・・・ 8:30分 振子山到着 1452m ユートピア避難小屋が見えます。

 振子山からは灌木の中のダウンアップです。100mの標高差がそれ以上に感じます。でも、一歩いっぽ進んでいくといつの間にか着いてしまいます。目標への期待が大きくなると苦しさが増します。とにかく目の前の一歩を踏み出すことを繰り返していれば、いつの間にか目標は手の届くところに来ています。この年になって生き方を教えられているような気がします。
 ユートピア避難小屋に着きました。

1550ピーク ユートピア避難小屋と三鈷峰を望む 9:50分 ユートピア避難小屋到着

 そこから分岐を越えて最後のピーク三鈷峰に向かいます。2日ぶりに人に出会うようでなんだか不思議な気持ちでした。

10:20分 三鈷峰山頂(1516m) 大山連峰 米子市を一望
船上山・勝田ヶ山・甲ヶ山 甲ヶ山・子矢筈・矢筈ヶ岳 大休峠・野田ヶ山・親指ピーク

 ここからは大山町まで下るだけ。と思って感慨に浸っていたらそれは大間違いでした。下りのルートを砂滑りコースを選んでしまった自分たちの責任もありますが、最後の最後まで楽しませてくれた大山でした。
 後戻りできないロープ伝いの沢を下り、砂とともに沢を流れて谷の間を下ります。左右にせり出したかたまりは岩ではなく雪でした。山靴を真っ白にしながらようやく元谷までたどりつきました。

分岐までの下り ロープ場 せり出した残雪
砂滑り 砂滑りの谷を振り返る 13:00分 元谷到着

 5月に甲ヶ山に行こうと娘とやってきて、予定を変更して大山登山になりました。あの時期はまだ残雪が多くさらに危険な状態だった思います。いろいろな力に守っていただいている気がします。今回の山は2人の思いを叶える山でしたが、2人にとっていろいろ良い学びになりました。やっぱり山はいいです。
 山歩きは2日間でしたが、その過酷さを物語るべく、2人の体重はここ数年で最軽量になりました。北アルプスに劣らないインパクトのある山々で、心から満足できた山歩きでした。元気な自分と相棒に感謝です。

高低差グラフ(カシミール3Dで作成)


蒜山高原のひまわり畑


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