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トシの判断は正しかった。荷物を降ろした私の体は疲労に包まれ、膝は思い出したようにずきずき痛み出す。荷物を一手に引き受けているトシはなおさらだろう。山での無理は死につながる。動きを止める勇気をトシから教わった。
風の吹き込まない場所を見つけて、杉の小枝を敷き詰める。ふかふかのベッドのようなグランドにテントを張って、夕食を食べる。日本人2人の夕食だ。米だ。2人でしこたま食べて、寝袋に潜り込む。まだ7:30分だが、暖かい寝袋はすぐに私を夢の世界に連れて行ってくれた。
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| 時折吹き荒れる突風に目を覚まされながら朝をむかえた。気温は氷点下5度。体感気温はどれくらいなのだろう。ボトルの水もかちこちに凍っている。小さなポンド(雨のたまり水)に水を汲みに行くが、表面の氷を割って水を汲まなくてはいけない始末だ。風は相変わらず強く、手袋無しで行ってしまった指先は激痛を伴って恐怖さえ感じさせる。逃げるようにビバーク場所まで戻って、ホットティーをすすって暖まった。すごい場所だ。冬山の経験のほとんどない私にとって、この体感する寒さは始めての経験である。「厳冬期のマウントワシントンはこんなものではないですよ。」と、トシは笑っている。この笑顔に安心する。 | ![]() |
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am8:00に出発して、岩肌を4.5km。朝日を右半身に、冷たい風を左半身に浴びながら、The
Horn 1231m , Saddle Back Junior 1114m , Poplar
Ridge 958m と、アップダウンを重ねる。目に映る景色は、私のボキャブラリーでは表現できないくらい美しい。山頂付近の霧氷も素晴らしい。日陰の土はまだかちこちに凍っていて、でっかい霜柱をふみながら歩く。このハイキングに来て良かった。
夕刻に Orbeton Stream 469mを越えるが、今日はもう少し歩くことにする。そこからの長い4kmを頑張って歩いて、林道沿いの小さな広場でテントを張ることになった。 |
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10月23日(月)
テントや、外に出していたザックが真っ白になっている。凍ってしまった。「冷え込むと言うことは、天気が良くなると言うことですよ。」と、トシは喜んでいる。空は雲一つない青空が広がっている。
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Lone Mtn 993m , Spalding Mtn 1222m を越えて、膝にこたえる急な傾斜を下って、Caribou Valley 677m に着いた。そこから更に足を伸ばして、小さなポンド 838m に着いた。今日のテントサイトはキャンプ場である。テントを張るプラットホームも常設してあって、トイレもある。ファイヤーサークルもあった。早速、薪を集めてたき火の用意をする。この日のトシの「いいハイキングですね。歩いて休むだけで他には何もしていない。山に入ったら、無理に説明する必要はないんですよね。」と言う言葉が忘れられない。 |
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トシとのハイキングの最終日だ。朝が何となく暖かくて雲行きが怪しい。振り返ってみると、2日前の
Saddle Back Mtn は雲をかぶっている。雪が降っているようだ。心持ち歩を早めて
South Crocker Mtn 1234m , Crocker Mountain
1289m を越えて、そこからひたすら下りで、16号線に向かう。足にさくさくくる落ち葉の感触が心地よい。一歩一歩ハイキングの終わりが近づく実感がわいてくる。いいコースの終わりにはいつも思うが、踏み出す1歩が何となくもったいない。
16号線に出てしまった。このハイキングはトシ無しでは計画もなかったし実現もできなかったハイキングだった。言葉にならない感謝の気持ちを胸一杯にかかえて、ブルーパブで最後の祝杯をあげる。トシ!橋本さん。本当にありがとうございました。
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