カヌー and ハイキング in ダイナミーコース


 ダイナミーコースは、高校生中心の22日間のコースです。場所を変えながら、バックパッキングやホワイトウオーターカヌーイングなど、いろいろなプログラムをこなしていきます。わたしがおじゃましたグループは、全米各地から集まったハイスクールの生徒9名のグループでした。小さな子供対象のコースがないHIOBSの中では唯一、チャレンジキャンプやクエストキャンプに近い雰囲気を持ったコースかも知れません。

 特にホワイトウオーターに必要な装備

  パドル 56インチ(つま先からあごまで)
  ヘルメット カヌーツーリングでは特に使いません。
  ライフジャケット 防寒にもなりました。
  厚手のフリースジャケット 防寒対策は念入りに。
  濡れてもいいランニングシューズ 1セット スポーツサンダルでは併用できません。
  特に乾きやすい着替え 2セット ポリプロピレンが推奨されていました。
  毛糸の帽子 防寒対策です。
  防水カメラ 使い捨てカメラが重宝されていました。

 ダイナミーコースのインストラクター

     インストラクターのマイクとクリスチーナです。子どもたちのわがままにもびくともせず、OBSのプロフェッショナルを見せてくれました。下は、イントラの間でブレイクしている軽量タープです。設営も居住性も抜群のすぐれもの!

9月19日(火)
 朝の8時にセンターにバックパックして行き、イントラの1人クリスティーナと一緒に移動のバンに乗り込む。ホワイトウオーターに必要なパドルやヘルメットやライフジャケットは前日にスコットに借りてある。カヌーツーリングは何度もしているが、本格的なホワイトウオーターカヌーは始めてで、期待に胸が躍る。
 1時間近いドライブの後、エロールという町に着いた。河原に降り立ったら、水しぶきをあげて波立っている川を目のあたりにした。この川を下るのか。自分のカヌーでは、あっという間に岩にぶつかって船底を裂いてしまいそうだ。身震いがする。
 9人の大学生と自己紹介をしあって、アレンという女の子とバディーを組むことになった。「アレン。」と言うと、「ハァーイ。」と返事をするくせに、「アレンだろう。」と聞くと、「アリスンよ。」とこだわる妙な女の子だった。
 まずは、パドリングの復習から始まって(私にとっては最初の講習だったが…)、実際に、急流を下り、岩を巻く水の流れを利用して岩の内側に入る「エディターン」を練習した。
次は、沈したときの練習で、上流からずぶずぶ水の中に入って、「あれー。」というかけ声と共に急流に飛び込んで、自力でエディターンをする訓練だった。上半身裸でライフジャケットを身につけて飛び込んだら、息を止めるくらい水は冷たく、さらに片手に持ったパドルが自由を奪ってどんどん下流に流されていく、先に飛び込んだ大学生が、「ちくしょう。ちくしょう。」と叫びながら岸に泳ぎ着いた気持ちがよく分かる。とにかく、足を下流に向けて水面に浮かせて、岩場をやり過ごし、岩を巻く水に乗るべく死にものぐるいで水をかいた。「グッドジョブ!」みんなでお互いの健闘をたたえ合う。
 カヌーは濡れるのが当たり前と言った感じで、乾く間もなく次の練習に取りかかる。岩場の影から急流を横切って反対の岩場の影に移る「アップストリームフェリー」。岩場の影から船首を反転させて流れに乗る「ピールアウト」、どれも、バディー2人の呼吸が合わなければうまくいかない。言葉がうまく伝わらずにぎくしゃくしていた2人だが、習うより慣れろで、どんどん気持ちが近づいていく。やっぱり、アクションを伴うプログラムはいい。ちょっと下った岸から歩いて出発地点まで戻って昼食を取った後、再びカヌーに戻って、さあ、ホワイトウオーターに挑戦だ。岸を歩いてくだってルートを下見する。簡単そうに見えるコースでも、隠れ岩が潜んでいてコースを阻んでいたり、岩が連続して濁流になっていたり、見れば見るほど恐怖感をあおる。
自分なりに安全なコースのイメージを描いていると、突然アレンが、「一番に行きましょう。とにかく真ん中の一番波が激しいところよ。」とはしゃぎだした。舵を担当するおじさんとしては仕方がない。「OK!それで行こう。」と、こぎ出した。カヌーの先端がざっくり水面下に入って水をかぶる。岩をぬって渦巻く波に突っ込む。「これよ。これがいいの。」と興奮するアレンを乗せて無事に穏やかな岸に着岸した。カヌーの中は半分水をかぶり、沈没寸前である。危ういところだった。が、これは楽しかった。「もう一度行くわよ。」と言うアレンに2つ返事で快諾して再び挑戦である。しかし、イントラのマイクが、「次に行くんだったら、前後逆でチャレンジしてね。」と言うから驚いた。アレンは、後ろの経験がない。後ろは舵取りの役がある。アレンが不安そうに舵のイメージトレーニングをしている。OK!GOだ。それも面白い。カメラやサングラス。貴重品一切を岸に置いて挑戦。We did it! 岩に乗り上げたり、横倒しになって後ろ向きに進んだりしたが、無事渡りきった。グッドジョブだ。お互いの健闘をたたえ合った。
 その日は、それから8マイルのカヌーツーリングをしてキャンプサイトを探す。8マイルと言えば12kmだ。しかし、時刻は午後4時。イントラはのんびり見ているだけで何もしない。「このままでいいのか。のんびりしすぎていないか。」と聞くと、「今日からメインフレーズに入ったから彼らに任せているんだ。」と言う答えが返ってきた。なるほど、フレーズなんだ。トレーニングフレーズ、メインフレーズ、ファイナルフレーズで構成されているという。ここからがイントラの我慢の見せ所である。
 水門をポーテージして越えて、川を逆のぼってUMBAGOC LAKE へ出た。湖面は、幻想的な夕暮れから、溶けるような真っ黒な夜の湖面へと姿を変える。お互いの所在を声を掛け合って確認しながら目的地に進む。地図を読もうにも、アレンにヘッドランプを貸して地図が読めない。
おぼろげな地図の記憶で何となく自分の場所をイメージしていく。漕ぐこと6時間。夜の10時に湖面に浮かぶ Big Island という島に着いた。遅い夕食を食べながら今日を振り返る。とにかくみんな疲れていて、言葉か少ない。長い1日だった。
 
9月20日(水)
 Big Island を出発して湖を南下し、Sargent Cove という湾に入った。ボート乗り場の広場には、すでにレスリーがリサプライの車を乗り入れて待っていてくれる。
 新しい食料とストーブを手に入れた子供たちは、自分たちのザックにパッキングしていく。が、最後まで共同備品がなかなか無くならない。9:30分からリサプライが始まったが、ミーティングも含めて出発はpm1:15分となった。バックパッキングのブリーフィングとフルバリューコントラクトに随分時間をかけた。出発前のコースとオプションの説明も30分以上時間をかけて行った。
子供たちの話を聞く態度が気になったが、マイクとクリスティーナはじっと我慢していたようだ。
 pm1:15分に出発し、トレールを通ってバックパッキングが始まった。子供たちの足取りは軽く、20分毎にバックを担いだままの休憩を取っている。じっくり1時間歩いて、バックを降ろしての休憩が始まったが、何と50分間の休憩で、だんだん様子が怪しくなってきた。出発しても、荷物の重い子供が不平を漏らすようになり、グループも離れだした。30分歩いて30分休憩。そして15分歩いて15分休憩。次に15分歩いた後にはもうグループは動かなくなっていた。地図読みを間違って、自分たちは随分先に進んでいるつもりらしい。が、マイクはここでもじっとがまんしていた。2日前にトレーニングフレーズ(カヌーのプログラム)が終わり、今はメインフレーズだから、子供に任すのだという。今日の遅れを取り戻すスキルがあるからこそできるのだろう。その日は5マイル(7〜8km)歩いてキャンプとなった。
 そんな雰囲気の中での夜のミーティングは楽しみだったし、子供たちはその期待を裏切らなかった。カヌーとは違う先ほどまでのバックパッキングで、子供たちの地が爆発したようで、お世辞にも穏やかとは言えないミーティングとなった。子供たちの言葉にはスラングがとても多くて内容がよく分からなかったのが残念だったが、マイクとクリスティーナが、我慢している中で、話に頷いたり、たしなめたり、時には笑ったりして、何とかミーティングの形に持っていっているのが印象的だった。
 その夜、「あれだけフレーズを貫けるなんて、2人は本当にプロだね。」と言ったら、「タツのやっているキャンプの子供たちも、こんな感じなのか。タツたちもフラストレーションを感じることがあるのか。」と聞いてきた。イントラのかかえる問題は、国が変わっても変わらないようだ。
 
9月21日(木)
 子供たちに起こされて目が覚める。子供たちが口々に「おはよう。タツ!」と言ってくれる。このままみんなとバックパッキングを続けていきたい気持ちになったが、今日はそれができない。
 8:15分に2人と抱き合って別れて、子供たちとも一人一人と声をかけ合って別れる。どの子もとても素直な顔で嬉しかった。5時間かけて歩いてきた道を、1時間半で引き返す。途中から雨が降り始めて、雨の中のエリーとの再会になったが、心は軽かった。

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